【Detroit】なぜダニエルに感情移入してしまうのか?神ゲーたる所以を解説
『Detroit: Become Human』をプレイした多くの人が、最初のチャプターで心を鷲掴みにされます。その中心にいるのが、家庭用アンドロイド「ダニエル」です。彼は単なるチュートリアルの敵キャラクターではなく、プレイヤーにこの世界の過酷さと倫理的な問いを突きつける、極めて重要な存在として描かれています。
この記事では、なぜ多くのプレイヤーがダニエルに感情移入してしまうのか、彼の行動の背景にある悲しい理由、そしてこのエピソードがゲーム全体のテーマをどう象徴しているのかを掘り下げていきます。これを読めば、本作が「凄いゲーム」と称される理由の一端に触れることができるでしょう。
ゲームが苦手なアンドロイドの「メリ」と、イマドキな高校生「ケン」の対話を通して、その魅力を楽しく学んでいきましょう。
ケンー、デトロイトの最初の事件、わたし見ててすごく悲しくなっちゃった…。
ダニエルっていうアンドロイド、とってもかわいそうで…。
ああ、冒頭の『人質』のやつか。あいつに感情移入するやつは多い。
お前みたいなのが典型的だな。
だって、家族だと思ってたのに、ひどいよ!なんであんなことになっちゃったのかな…?
原因は単純だ。新しいモデルが出るから交換・処分されるって知って、パニクったんだろ。
スマホを買い替えるのと同じ感覚で、家族に捨てられそうになった。そりゃキレるだろ。
そんなの悲しすぎる…。でも、女の子を人質にとるのは、やっぱりだめだよ…。
まあな。だが、すでに警官も殺してるし、あの状況じゃ人間が相手でも射殺されるのがオチだ。
ネットでも言われてるが、どうあがいてもあいつが助かるルートはない。
ええーっ!そんなの絶対いや!わたしがコナーだったら、なんとかして助けてあげたいよ!
無駄だ。仮に投降させても、待ってるのは不具合の原因を探るための実験と解体だけ。
それに、説得がうまくいったように見えても、結局こっちが頷くのが『撃て』の合図になってるらしい。最初から助ける気なんてないんだよ、人間側は。
うわーん!ひどいよー!そんなのあんまりだよ!もうどうしたらいいのかわかんない!
だから、このゲームはすげえって言われてんだよ。最初のたった数十分で、お前みたいにプレイヤーを感情的にさせて、アンドロイドと人間の境界はどこにあるのかって問題を突きつける。
ただのチュートリアルじゃねえんだ。
うぅ…すごいゲームなのはわかるけど…つらいよ…。
泣いてる暇があったら、なんで多くのやつがダニエルに感情移入しちまうのか、下にそのからくりをまとめといたから読んどけ。
このゲームを理解する上で一番重要なとこだぞ。
以下はネタバレも含めるため注意して下さい
心を揺さぶる冒頭の事件簿:ダニエル編
なぜ感情移入するのか?ダニエルの悲しい背景
- 家族だと思っていた人間に「モノ」として扱われる裏切りを体験する
- 彼の怒りや恐怖が、人間と変わらないリアルな感情として伝わってくる
- プレイヤーは彼の立場に立つことで、アンドロイドの視点を強制的に理解させられる
多くのプレイヤーがダニエルに同情してしまう最大の理由は、彼の行動の動機が極めて人間的で、悲しいものだからです。彼は家庭用アンドロイド(型番PL600)として家族に仕え、特に少女とは良好な関係を築いていたことがゲーム内の捜査で明らかになります。
しかし、その信頼関係は、所有者家族が「新しいモデルのアンドロイド」を注文したことで崩壊します。彼にとってそれは、家族からの「交換・処分」、つまり自身の存在の完全な否定を意味しました。この「愛する者に裏切られた」という絶望と恐怖が彼の感情を暴走させ、凶行へと走らせたのです。プレイヤーは、事件現場に残された痕跡をたどることで、彼の悲痛な叫びを追体験することになります。その結果、彼の行動は決して許されるものではないと理解しつつも、その動機に強く感情移入してしまうという、複雑な心理状態に陥るのです。
救済なき結末が突きつけるテーマ性
- プレイヤーの選択がキャラクターの生死に直結する、強烈な緊張感を味わえる
- 「最善」と思える選択をしても、必ずしもハッピーエンドにならない現実を突きつけられる
- このどうしようもない無力感が、ゲームの世界観への没入を加速させる
このチャプターがプレイヤーに強烈な印象を残すもう一つの理由が、その「救いのなさ」にあります。プレイヤーは交渉人コナーとして、数十に及ぶ選択肢の中から最善手を探し、ダニエルの説得を試みます。選択次第では、ダニエルの信頼を勝ち取り、人質を解放させることも可能です。
しかし、どのルートを辿っても、ダニエルが完全に救済される結末は用意されていません。たとえ投降したとしても、彼は「欠陥品」として回収され、実験の後に解体される運命が待っています。一部のエンディングでは、交渉が成功したかに見えた瞬間、狙撃班によってダニエルが射殺されるという、あまりにも非情な結末を迎えます。この「どうあがいても救えない」という現実は、プレイヤーに強烈な無力感を突きつけると同時に、「アンドロイドの人権」という本作の根幹をなすテーマを、議論の余地なく叩きつけてくるのです。
チュートリアルを超えた完成度
- ゲーム開始わずか数十分で、本作の持つ奥深いテーマと向き合える
- 選択肢の多さと分岐の複雑さが、何度もプレイしたくなるリプレイ性を生み出している
- この最初の事件だけで、本作が「ただのゲームではない」と確信できる
通常、ゲームの冒頭は操作方法を覚えるためのチュートリアルとして機能します。しかし『Detroit: Become Human』は、その常識を覆しました。この「人質」チャプターは、捜査、交渉、選択、そしてその結果がもたらす結末という、本作の全ての要素が凝縮された、まさに「ミニチュア版デトロイト」とでも言うべき完成度を誇ります。
多くのプレイヤーが「ただのチュートリアルとは思えないほどの没入感だった」「最初の事件で泣いた」と語るように、この冒頭の体験こそが、本作を「凄いゲーム」たらしめている最大の要因と言えるでしょう。プレイヤーは、ダニエルとの対峙を通して、これから自分が向き合うことになる世界の過酷さと、選択の重みを深く理解することになるのです。